ダイアモンドのリカットは

研磨済石をわずかに削ることによって、現在のグレードからクラリティーをアップさせたり、カットグレードを日本の市場に合うようにリカットすることにより、石そのものの付加価値を高めるために行います。
ご承知のように日本では7~8年前に景気に陰りが出始めた時、ダイヤモンドの価値の差別化をカットに注目することで行いました。4Cの中で、唯一、人が改良できる余地があるからです。その後カットグレードに対する要求はどんどん高くなってきて、現在はエクセレントが付加価値として重要な時代となっています。
輸入すれば何でも売れたいわゆるバブルの時代に仕入れた石の中にもリカットによってよみがえる物も結構あります。
また仕入れに際してもリカットでクラリティーグレードやカットグレードが上がる可能性のある石が多く含まれるロットは、少々高くてもお買い得です。
日本のこの業界はまだまだリカットの重要性や経済性に注目する人は少ないので、以下に例を上げて具体的にご説明しましょう。(注:金額はあくまでだいたいの目安に過ぎません)

例 1    
0.54ct E SI1 Fair
0.50ct E VS1 VG
\180,000/ct(ガイ)として\97,200/pcsのものが、リカット後は、\350,000/ct(ガイ)として、\175,000/pcsとなり、リカット手数料を引いても\65,800のプラスとなります。
(リカット手数料\12,000)
例 2    
0.55ct D VS1 Good
0.50ct D VVS1 EX
\300,000/ct(ガイ)として\165,000/pcsのものが、リカット後は、\600,000/ct(ガイ)として、\300,000/pcsとなり、リカット手数料を引いても\115,000のプラスとなります。
(リカット手数料\20,000)

クラリティーをSI1に留めるならばカットはEX(エクセレント)まで上げるとこが可能だが、クラリティーをVS1まで上げるとカットはVG(ベリーグッド)止まりとなり、重量の損失もある。経済的見地により、どちらを選択すべきか予測することが重要である。

 

 

 リカットに適切な石の選択

プロポーション修正(Grade Up)が可能な石

基本的なダイアメーターを有し、トータルデプスが59.2~62.4%であること。
例 : 5分石の場合
   Diameter x Diameter x Depth x 0.0061 = 0.500以上
注意 : オフセンターキューレットの石やウエイビーガードルの石はリカットにより、トータルデプスやダイアメーターが小さくなって、重要で5%以上のロスが出る場合が多くリカットには適さない。

クラリティーアップが可能な石

俗に言う傷取りのできる石であるが、VS以上のグレードの石はルーペで内包物の大きさ、深さを判断するのは、難しいため、顕微鏡検査できる能力が必要。
わずかな重量の損失で、①と②が可能な石を捜すことが望ましい。

例 3-A クリベージの位置
Aはクラウン側のベゼルファセットとアッパーガードルファセットにあるクリベージなので、わずかなクラウン角度の調整のみ(わずかな重量ロスのみ)でグレードアップが可能である。
例 3-B
Bはべセルファセットのクリベージがべビリオンまで達しているので、リカットはダイアメーターまで小さくしなければクラリティーは上がらない。(重量ロスが非常に大きい)
例 4
C~E:クリスタルが同サイズ、同深度に存在しても、Cの位置にあると最もロスが大きい。DおよびEはクラウンアングルをわずかに調整するだけ(わずかな重量ロスのみ)でグレードアップが図れる。F~H:Gは最も重量ロスが大きい。FおよびHはパビリオンアングルのわずかな調整によってロスを抑えグレードアップできる。

日本のほとんどのバイヤーは、海外での仕入の際に使用するのは、ルーペのみで、提示されているクラリティーを確認するに留まっているのではないかと思います。しかしながら、あるロットを選ぶ際にリカットで1~2グレード程上がる石がより多く含まれているかどうかを調べることができれば、仕入れの段階で、すでに同業他社に差をつけることができます。ダイアモンドのリカットに注目することは、この不安定な為替変動と低迷している不況下の日本経済の中を生き抜いて行く1つのヒントになるのではないでしょうか。
私がGGを取った1990年頃には石を売るのに必要なのは経験やセールストークのうまさであって、そんな知識は必要ないと言う業界人も一部ありましたけれども、今や時代は変わったと思います。ある石に付加価値が付けられるかどうか見極めて売買するのが、プロのダイヤモンド業者として生き残れるかどうかの瀬戸際であり、その好例として、リカットの見極めがあると思います。

以上述べてきたリカットの具体例もGGのダイヤモンドグレーディングの知識が基本にあればこそです。

もちろん、グローバルな石の相場を知ることや、リカットに対する経験も必要ですが、何よりもまず、GGとして学んだ専門知識が生きてくると思っています。疑問店や詳細はご遠慮なくお問い合わせ下さい。

  

 

 リカットの工程

顕微鏡検査
  顕微鏡でまずポリッシュ・シンメトリチェックをします。
キズ取りがある場合は更にキズの深さ・大きさの確認もします。
キズ取り ->->-> クラリティアップ
 
ダイヤモンドリカット料金表
ダイアメンション測定
  ダイアメンションというコンピューターシステムでダイアのプロポーションをチェックします。
この時点でどの部分をどのようにすればお客様の希望のカットになるのかわかるのです。
ダイアメンションは各鑑定機関で使われているものと同タイプです。
 
研磨
  ①と②を基に実際にダイアをリカットしていきます。